劇場でひとり、しめやかに発狂

観劇、コンサート、映画などの感想

WINNER JAPAN TOUR 2019 @幕張

 

WINNER JAPAN TOUR 2019 幕張公演に行ってきました。

WINNERは最高だ。本当にすごい。そして幸せであってほしい。バカみたいだけれど、何度見てもそういう結論にしか至らないのだ。

今まで何度か公演の感想をブログにしたためているのだけど、毎度毎度驚かされるのはその普遍性。メンバーの脱退にとどまらず、会社の信用まで失墜して、あらぬ疑いまでかけられて、私だったらもう嫌になって辞めてるかもしれないのに、WINNERは地に足ついて、いつだってゆるやかに存在し続ける。それがどれだけ難しいことか。芸能人なんて、呼吸してるだけでバッシングされかねないのに。そんな渦中にいてもこの安定感、すごい。

 

ひとつ、スンユンの才能と熱意がある。

今回のMC中、彼は「日本の皆さんに対して出来ることは、まずいい日本語の楽曲を届けること」と言った。その通りだ。常に根本を見失わない。上辺で取り繕わない。そして、彼はいつも自分たちのことを「歌手」と呼ぶ。彼なりの矜持なのかなと勝手に思っているし、その言葉に偽りなく、抜群の歌唱力を毎回変わらず見せつけてくれる。いつ見ても同じだけ上手い。ライブに赴く者として、こんなに幸せなことはない。最高だ。

テヒョンが抜けた後、いい意味で脱力したなと思ってたのだけど、今回は一連の騒動後だからか、またちょっと空回りしているようにみえた。それだけ、自分が背負う(べきではないはずなんだけどね…)責任の大きさを、よくわかっているのかなと思う。あちこちに向かって大丈夫か、疲れていないか確認した後、「皆さん大丈夫ですかーー!?」「イェーイ!」というコール&レスポンスがあった。冷静に考えたら、いまだかつて大丈夫ですか?などと舞台上から問われて盛り上がったことがあっただろうか…?熱意とやさしさがオーバーヒートしている。最高だ。幸せになってほしい。

 

ひとつ、スンフンの柔軟性がある。

ミノの描いた絵を「変態仮面ライダー」と言い放ったスンフン。いいんだ、これで肩の力が抜けた。何なら私のライブの記憶の2割くらいは変態仮面ライダーだ。それでいい。ともするとスンユンだけでは暑苦しくなりがちな空気を、フニはいつもほぐしてくれる。長い手足を余裕ありげに、そしてユーモアたっぷりに動かすしなやかなムーブに、WINNERの余裕を見て心地よくなる。心のトゲが削ぎ落とされる。菩薩めいたルックスも好きだ。なぜか今回のフニが黒木華に見えて仕方がなかった。

誰かの出てこない言葉をぬるっとサジェストしたり、言いづらいこともフニならオッケーな空気を作り出したり。奔放にふざけているようで、じつはめちゃくちゃ周りが見えているし頭がいい。

で、あるが故のイ次長という冗談めかしたネーミングが、あの渦中でやり玉にあがってしまったのはかわいそうだなと思うのだけど、WINNERにとっての心の次長であることはこれからもゆるがないでほしい。あんな上司のもとにいられたら最高だ。

 

ひとつ、ジヌのタフな精神力と美しさがある。

正直芸能人に向いているのか、老婆心で勝手に心配していたのが嘘のように日々ジヌはたくましくなっている気がする。報われる保証のない中、年数も、1日のなかでかける時間も、誰よりも長く練習してきて、それで今の地位を築いたジヌの地盤は固い。実力も上がっている。眠っていた能力がようやく、這いつくばって開花した。なんとなくちやほやされて、そこに安住するのはたやすい。目先の甘言を押しのけて、鼻血を出して、今に至る。こんなに泥臭いカリスマ性、そうそう作れるものではない。最後の最後、瞬間涙ぐんだ彼を見て、ジヌが経てきたであろう道のりの重さを感じた。こみ上げてくるものがあった。

そして圧倒的な美貌。一昔前、イケメンは謙遜すべしという風潮があった気がする。が、余裕を身につけたジヌは、惜しみなく顔面力を見せつけてくる。口に出しているわけじゃないけれど、何をしていても「まあ僕、美しいんで」という接尾語がつきそうなくらいにいい表情を浮かべていた。彼が輝かしすぎた結果、ダンサーの女性に囲まれても性的な雰囲気が一切生まれないという特殊な状況を作りだしていた。この流れ、デジャヴだ、と思ったのですが、吉沢亮が放つそれと酷似している。圧倒的な造形美の前に男も女も関係ない。一般的に、顔がいい「だけ」などと揶揄されたりもするが、顔がいいなんて、人を引き付ける、立派かつ真似するのが最も難しい才能。どこから撮ってもベストショットなんて最高だ。

 

ひとつ、ミノの感受性がある。

6年間日本語が下手ですみません。いいです、その分素晴らしい「楽曲」と「パフォーマンス」で還元してもらってるので。とにかく私はWINNERのあふれんばかりの才能と努力の賜物である公演内容に期待してライブに足を運んでいるし、毎回そこは裏切られることがない。そりゃ日本語が達者ならすごいな、と思うけれど、あくまで付加価値。というか、ミノのユニークなものの見方は、拙い言葉1つ1つに、リリックに、しっかり投影されている。それでいい。

スンユンが、「幕張メッセにはKCONで来たことがある。そんなところで単独公演する日が来るとは。広いステージだな、と口に出した記憶がはっきりよみがえってきた。」という趣旨のコメントをした。詳細な思い出話が作用したのか、その後少し間をおいてから彼は歌に詰まって泣き出した。この想像力が、感受性の高さが、仕草となり表情となり、舞台上に生身の感情が生まれる。様々な場所を転々と渡り歩いてきたからこそ、ミノにしか見えない景色もあると思う。その繊細さが、勝手ながら時折心配になることもあるけど、どうか幸せでいてほしい。ガラスは割れやすいからこそ美しくて最高なのだ。

 

 

四者四様。

遠い昔のWIN時代、デビューできなかったら僕らは解散です、と言っていたのが思い出される。同じクラスにいて、彼らが同じグループで友達になっていたか、と言われると、外から見ているだけの私でさえ「なってなさそう」と思える。

それだけ特性も考え方も異なっているだろうに、彼らが普遍的なのは、ひとえに彼らのプロフェッショナリズムによるところだと思う。四者四様であるからこそ、各々が自分に出来ることをプロとして追及して、グループに還元する。ただのなかよしこよしであったなら為し得ないことだ。そうして芸能活動・歌手活動に対してそれぞれひたむきだった結果が今のWINNERの実力だろうし、そこから後天的に結束が生まれたのだと思う。大変な状況下、おくびにもだすことなく、ただただ客席が満足するステージを提供してくれる彼らにはつくづく頭が下がる。

今回は初のアリーナツアー、初の生演奏、初の全編4人歌唱、初のトロッコと、初尽くしの公演だった。どれもこれも、スタートダッシュでの成り上がりではなく、6年という月日をかけて、一歩一歩階段を上って、つかみ取った付加価値ばかり。泣けてくる。

彼らのためにツアーごとに用意されているサプライズも愛に溢れているし、時折彼らからのサプライズ演出もある。どんなに彼らが近くに来ても、幸い今まで押し合いに発展したことはないし、今回も私の周囲は終始和やかだった。どうやったら見る側が満足するか、スタッフと演者がどう連携するか、4人だけでなくチームとしていつも考えていた結果だとしたら、こんなに素晴らしいことはない。彼らを取り巻く温かいムードに、毎回足を運んでよかったなと思える。

 

WINNERの周りは常にノイズに溢れている。言われもないバッシング、目先の誘惑、一介の会社員の生きる環境とは比べ物にならない異様な世界だと思うし、最近はそれに引きずられた人々を目にする機会が残念ながら増えてしまった。真偽がわからないものが多いところも、また恐ろしい。

そんな不安定で淀んだ空気の中、抜群の安定感を誇るWINNER。その努力、その精神力、いかばかりかとまた頭が下がる。どうか4人には、普通に、幸せに、いてほしい。時には自ら危険に首を突っ込むこともあるかもしれないけれど、どうか輪になって助け合ってほしい。1万円を払うと、値段のつけようがない素晴らしい体験を返してくれる彼らの、ゆるやかな幸せを心から願い、文の締めとしたいと思います。

ちなみに、この日は前日延期になっていた浦安の花火大会が開催されていて、たまたま入ったお店からとてもよく見えました。最高の1日にしてくれたWINNERに感謝です。